第7話 ロマンチックが見える場所
「ここではなんですので……詳しい話は、場所を変えてからにしませんか?」
窓から部屋の中に入ってきたロゼッタ。
俺にどうしても会いたくて、会いに来たロゼッタ。
それが、どうやら場所を変えてお話したいらしい。
これはもしや……こ、告白?
「なんか
「うむ、怪しさ満点だな」
「うさんくさヤバ~」
おいお~い?(笑)
こぉ~んな美しい姫様が会いに来たんだぞ?
まったくお前らは……目が曇ってるな。(笑)
ま、エイリアンだからしょうがないか。
お前らには、人の気持ちなんてわからないもんな。
ってことで……。
俺たちはロゼッタに従って宿屋を出るぜ!
「え~? 行くのかよ、ソラ~?」
「う~む、どうにも危険な香りが……」
「うぇ~、護衛しなきゃいけないこっちの身にもなってよ~」
文句を言いながら、エイリアンたちも渋々ついてくる。
窓から入ってきて、ドアから出ていく。
謎。
最初からドアから入ってくればいいのでは?
「あまり一人の時に人目につきたくなかったので」
なるほど。
たしかにこの集団にまぎれてたら誰も姫に気づかないだろう。
それくらい目立つから、このエイリアン集団。
部屋を出る時、不安そうな表情の入江と目が合った。
何も言わないけど、入江も心配してるのが伝わる。
大丈夫。
俺は心のなかで伝える。
ロゼッタはそんな怪しい人じゃないから。
絶対。俺にはわかるから。
ってな感じで、部屋から出た俺らは階段を下りて一階受付前を通過。
宿の主人は俺たちが一人増てることにも気づかず、へこへこと会釈を繰り返していた。
軒先のランプの灯る夜の城下町を、ローブ姿のロゼッタを先頭に進んでいく。
日はすっかり暮れてるのに、まだまだ人通りは多い。
その皆が、俺たちを見てのけぞる。
それもそのはず。
ゼノモーフ型エイリアンに、ソウルジェム系エイリアン。
人間が本能的に忌避する造形をしてるんだから。
通り過ぎる人々の視線は、決まって「
俺は普通の人間だけど、服が制服のブレザーだからさローブ姿のロゼッタより目立ってるみたい。
そんなことを思ってると、ロゼッタは人通りの少ない裏路へと入っていった。
「ロゼッタ? どこに向かってるんだ? 町外れの方に向かってるみたいだけど」
「着いてからのお楽しみです☆」
最上級の笑み。一国の姫(美少女)の笑みが、俺だけに向けられてる。
胸熱と言えば胸熱なんだけど……。
「チッ!」
ロゼッタ姫のことが嫌いすぎるだろ、こいつら。
けれどロゼッタはそんな
そのまま着いていくと、裏路を抜け、雑草に覆われた小高い丘の前に出た。
ロゼッタは足を止めない。
草むらをかき分け、勾配のゆるいところをズンズンと登っていく。
一瞬戸惑ったものの、ロゼッタの後についていくことに。
一見、草ボーボーなところも、通ってみると意外と快適に歩ける。
しばらくそのまま登っていくと、開けた場所に出た。
眼下には城下町。
小さく灯ったランプの光がとても幻想的だ。
「ロゼッタは……ここが見せたかったんだな」
「はい」
おいおい……?
こんなロマンチックな場所にわざわざ連れてきたってことは……?
「お~、いい眺めじゃ~ん!」
「ふむ、ここから見ると興味深い街の造りなのがわかるな」
「ん~、空気が美味し~☆」
散々ぶーたれてたエイリアンたちもロマンチックな眺めにテンション上がってる模様。
「それに、それに! 星が、とってもはっきり見えます!」
入江は天文部部長らしく星に反応してる。
つられて空を見上げると、真っ逆さまに落ちてきそうな一面の星空が、くっきりと目に飛び込んできた。
「わ……! すっご……!」
「たくさんの星々。きれいですよね……」
「エイリアンでも『星は綺麗』って感じるんだな」
「当たり前じゃないですか! アマツキくんは、異星人をなんだと思ってるんですか!?」
怒る入江の瞳は、月光に照らされて妖しく光っている。
「あ~、ごめんごめん。でもさ、ここって……やっぱり地球とは違う惑星だな」
「はい。でも、あの星ひとつひとつに歴史があって、それぞれが時を刻んでいるんです。それを考えると、私は胸が締め付けられるような感動を覚えるんです」
(へぇ、入江って意外とロマンチックなんだな)
うっとりと空を見上げる入江の横顔を盗み見る。
グレイ型。
俺たち人間としては背筋がゾッとするような姿かたち。
でも、この時は……そんなグレイ型の入江がなぜか美しく見えた。
……月の光のせい?
それとも慣れた?
なんて思ってると、背後からのロゼッタの声で我に返らせられる。
「惑星……天体……異星人……? まるであなた方は、あれらの星を詳しく知っているかのようですね?」
──!
……しまった!
気が緩んで口が滑りすぎたか──?
「いいんです。私は、あなたたちの正体を探ろうとしてるわけじゃないんです。ただ、私はこの景色をあなた方に見てほしかっただけなんです。だって……」
そう言ってロゼッタは高台の柵の前で振り返った。
金の絹のような髪が、月光を浴びて幻想的に舞う。
「この景色が、私の中で一番価値のあるものなんですから」
めっちゃいい雰囲気……。
これ、あれだ……もう完全に告白されちゃうだろ……。
どうするよ? 俺のことが好きとか言われたら……。
ドキドキドキ……。
「それと、もう一つ。あなた方に見せたいものが」
俺は舞い上がっていた。
だから、この時「スン──」とロゼッタの熱が引いたことに、俺は気づけなかった。
「えと……なにかな?」
気づけなかったどころか、鼻の下さえ伸ばしていた。
だから気付けなかった。
ロゼッタが諦めに似た笑みを浮かべ──。
高台の崖の上から、
後ろ向きに、
真っ逆さまに、
身を投げた、ことに。
「さぁ! 来なさいっ!!」
落ちながらロゼッタは叫ぶ。
と同時に、周囲からモンスターたちが飛び出してきた。
はぁ!?
罠!?
嘘だろ!?
さっきまであんなにいい雰囲気だったじゃん!
っていうか!
なんで罠なら身を投げてんだよ!
と思うも、俺の口からはとっさに指示が出ていた。
「
わからん。
なにもわからんが……。
モンスターは倒して、
ロゼッタは助ける!
そして聞く!
俺を──。
どう思ってるのかって!
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