第6話
「それにしても、大人の女性って感じになったわよねえ、下山さん。今も同じところで働いているの?」
「いえいえそんな……はい、ありがたいことにそのまま入社できまして」
安斎が懐かしむように言う。
「未来ちゃんと初めて会った時は、学生さんだって分かる雰囲気だったものねえ」
「あの頃は……まだ若かったもので」
「あら、そんなこと言って。まだまだ若いでしょう。私なんてもうおばさんよ、おばさん」
「いえいえ、そんなことありませんよ」
実に返しに困る言葉だけれど、安斎は軽口程度なら重く捉えることはない。
だからといって、相手の方は気を遣わなくてすむ、というわけではないが。
──でも、確かにあの頃は青かったわ。
安斎と初めて会ったのは、未来が今の会社でまだアルバイトとして働いてた頃。
社員の先輩の手伝いとして向かった先が、安斎が北区にいた頃にやっていた店だった。
右も左も分からず、ただ社員の先輩の言うがままに立ち回っていた自分が、こうして自ら取材する側に回るなんて。時の流れとは、予想外に早いものである。
「さて、安斎さんも忙しいかと思うので、取材を始めてもいいでしょうか」
懐かしむのもほどほどにし、未来は仕切り直す。
「えぇ、構わないわ」と言う安斎に対し、未来は事前に準備していたメモを取り出し、仕事を始めた。
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