第5話
「みちのく雑貨店」
それが今回の目的のお店の名だ。
周りはちょうど空き地や空き家で、どことなく寂しい感じの中に建っている。
だけど、住宅街が近くにあるのだから、人はよく通りそうだ。
シャッターは開けられており、店の中に並ぶ雑貨たちが見える。
中の様子を伺うも、人の姿はない。
「おはようございまーす!」
店の中へ向かって声をかける。声をかけてから、こんにちはの方が良かったのかと思い悩む。
「はーい」と奥から声が聞こえ、人が動く音と共に声の主が姿を出した。
「あらあら、下山さんじゃない。久しぶりねぇ」
未来が挨拶をする間もなく、未来の姿を見た瞬間、懐かしそうに言った。
「ご無沙汰してます。
このみちのく雑貨店の店主・安斎は、にこりと微笑み、未来を店の中へと誘った。
店の中はあまり広くはないけれども、空間の使い方がうまいのか、あまり狭いという印象を与えない。
ジャンルごとに分類されているであろう商品が、目をひくような形で置かれている。
「ちょっとここ座って待っててくれるかしら。開店準備すませてしまうから」
「あ、はい。こちらこそ、早く来すぎてしまいましたかね」
「いえいえ、ちょうどよ。私の準備がいつものんびりなだけ」
話しながらもパタパタと忙しそうに動き回る彼女に、未来は申し訳ないと思いつつ、邪魔をしないように用意された椅子に座った。
──安斎が落ち着いたのは、30分ほど経った頃。
「本当にごめんなさいね。こんなに待たせちゃって」
「とんでもない。私こそ、時間のことをもう少し考えれれば良かったです」
未来は出されたお茶をいただきながら、申し訳なさそうに言う。
実際、時間の指定は彼女から貰っていたが、未来も少し早く着きすぎた気がしないでもない。
お互いの時間を有効活用できるように予定を組む必要がある──未来は今後の課題としてインプットした。
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