第11話 防犯対策

琥珀の少女、赤毛の男は最上階の住人まで徴収を行い、その建物の出入り口まで降りていた。


その腰帯に留められた正方形の道具まどうぐは淡い水色、数十秒に一度点滅する。


「最初のおじさんなんか敵多そう」


「ああ」


「じゃあナーシェは表のほう」


男は頷き、建物を出る。


建物に留まった少女は、背中で両手を組み、足元を見る。数十秒数えたように、ぱっと顔を上げてそこを出た。


「(どさくさ泥棒)どこかな~」


少女は見回す。


建物の屋根、その隣の屋根。


「ここかな?」


琥珀の少女は、建物の小さな突起を蹴り、上へ駆け上がる。


屋根へ到達。


そこには何者もいなかった。


少女は屋根から大通りを見下ろす。


「大丈夫そうかなあ」


全ての建物では、流浪の民たちが出入りを行っている。


みな全て無傷。


「おい」


少女の背後に足音。


振り返る。


「どうだったロス」


赤毛の男だ。


「いなかった」


「見つけられなかったんじゃなくて?」


少女は片方の口端を上げて、笑みに細まる横目で男を見る。


「舐めんな」


視線で押しつぶすように、男は少女の隣に立った。


「こわーい」


ころころと喉を鳴らし、赤い唇は笑みを作った。


薄緑の目が大通りを見下ろす。


「早く終わらせてノアームとこの教会行くぞ」


「うい!」


少女は一歩下がる。


そして男の背中を見つめた。


赤毛の男は振り返る。


「また何見てんだ」


赤毛の男は頭頂部をがりがりと掻く。


「いいや別に何でもないよ」


"かわいい唇の、柔らかい笑み"


「あ、そいえば海水入った革袋使えないかな。たぶん他にいるよね」


少女は男の隣まで歩を戻し、屋根から飛び降りる。


「はん」


屋根のその先へ一歩踏み出した。




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