17

裕太は気まずそうに匠吾が座っていた椅子に腰かけた。

裕太と二人きりなんて何回もあったのに、今日は何と声をかければいいかわからない。


いや、あの時に私は決めたのに。

裕太にも、もう迷惑かけないって。

気持ちを受け止めて貰えて、私の事を幸せにするって言ってくれた。

それだけで充分じゃない。

それ以上を求めていいはずない。

私は、私は。


「舞ちゃん。」


気が付くと裕太が、心配そうに私の肩に手を置いていた。

「え?」

「すまんな。大変な事終えた後に来てもうて。疲れてるやろ?でも、良かった・・。」

そう言って裕太の目から涙が溢れる。

「赤ちゃんも舞ちゃんも無事で良かったわ。おめでとう。」

「裕太・・・・怒ってないの?」

「なんでや?」

「あの後、沢山連絡くれてたのに私、全然返さないで。裕太は勇気出して私に自分の気持ち伝えてくれたのに。」

裕太は自分の人生もかけて私を選ぶって言ってくれたのに。

私は自分が被害者みたいに自分の殻にとじ込もって。

「こんな私に赤ちゃんを育てる資格なんて・・・・。」


「舞ちゃん!」

裕太が強めた声で私の言葉を制した。

「何回も言うてるやん。自分を大事にせんといかんよって。資格とかじゃない。舞ちゃんしか舞ちゃんの子は育てられないんやで。」

「裕太・・・・」

「だから、 だからもう自分を責めなくていいんや。過去は過去。これからは舞ちゃんがちゃんと自分も赤ちゃんも愛していけるようになればいいんや。」

「私、出来るか分からないよ・・・。」

「一人じゃあらへんよ。舞ちゃんのお母さんも居る。俺も居る。」

「裕太・・・・」


「あの時伝えられなくてごめんな。改めて、

舞ちゃんの事が好きや。舞ちゃんと赤ちゃんの人生を一生かけて守らせてくれるか?」

「・・・・はい。」

やっと自分の本当の気持ちに素直になれた気がした。




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