11

「幼なじみって、もうそんなん気にする年やないやろ。」

面倒くさそうに頭を掻きながら、匠吾は言っていた。

「気にする年じゃないって・・・!そういうことやなくて、なんで舞をあんな扱いするんや!お前が好きだって、幸せにしたいって言うたから俺は・・・。」

「そう言うて漫画に逃げた奴に言われたくないわ。」

「!お前っ!」

吐き捨てる様に言った匠吾に裕太は取っ組みかかった時だった。


「もうやめて!」

私、こんなに大きい声が出たんだ。

私は二人の間に入り、震える手で止めた。

「舞・・・・。」

驚いた様に見つめている匠吾の事を睨み付ける。

「私の事はバカにしてもいい。でも、裕太の事をバカにするのはやめて。」

「は、なんでお前が裕太の肩もつん?舞は俺の妻やろ?」

「そんなの関係ないよ。匠吾、なんでそんな酷い事言えるの?昔の匠吾はもっと優しかったのに・・・・・・。」

「・・・・いいから帰るで。」

胸に当ててた手を強く引き寄せ、匠吾の方へ体が揺れたが、もう反対の手が優しく引かれた。

「裕太・・・。」

「話は終わってへんで。」

「は?話も何も、これは俺と舞の問題や。行くで。」

匠吾は裕太の肩を押し、私の手を離れていく。


離さないで。

その一言が言えず、私は匠吾に手を引かれる事しか出来なかった。


静まった食卓。

目の前には匠吾が罰が悪そうに足を組んで座っている。

喧嘩があるといつもそう。

機嫌を悪くすれば私が折れると思っている。

でも、それに従ったいたのは私。

そんな匠吾に従って、様子を伺い続けたのは、私。

なのに被害者ぶって、裕太に助けを求めて。

私は、明るい世界に行きたいだけなのに。

なんでこんなに、うまく行かないんだろう。


「・・・・なさい。」

「・・・・。」

「ごめん、なさい。」

「・・・・裕太とは、いつ会ってたんや。」

「数ヵ月前、たまたま道端で。」

「・・・・そうか。」

匠吾はため息をつき、タバコに火を付けた。

「もう会うのやめや。それで許したる。」

「そんな・・・・友達にも会わせてくれないの?」

「友達が人の嫁の手を握るか?」

「・・・・裕太は悪くない。私が、悪いの。私がワガママ言ったから。」

「・・・そうか。そうやって、またあいつの肩もつんやね。」

イラついたようにタバコを揉み消し、私の手を取ると寝室に連れていく。

ベッドに押し倒すと、私の両手を強く掴んだ。

両手首に痛みが走る。

「痛い、匠吾、やめて。」

そう懇願し見つめると、そこには悲しいような怒りを持っているような顔をした匠吾が居た。

「・・・なんで裕太やねん。舞はもう俺の物やろ。舞は、俺を好きで一緒になったんやろ!」

「そうだけど、今はもう、分からないよ・・・・・。匠吾は本当に私の事愛してるの?」

涙が零れ、匠吾の顔がぼやけていく。

私はただ幸せになりたいだけだったのに。

「渡さへん、あいつには・・!」

そう言って、匠吾は乱暴に私の唇を奪った。


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