10
やっと4、5年越しの気持ちを伝えられた。
「私ね、裕太と出会って裕太のまっすぐな所とか、落ち込んでる私の事をいつも茶化しながら励ましてくれたりするところが、ずっと好きだったの。」
「舞ちゃん・・・・」
「でもね、裕太の夢を聞いて思ったの。ここで私が居たら裕太の夢の邪魔になっちゃうのは嫌だって。だから、この気持ちに蓋をしてた。でも、きっとバチが当たったんだね。自分の気持ちに嘘付いていたバチが。」
「・・・・舞ちゃん。」
「でも、ダメだよね。ちゃんと自分の決めた道をちゃんと考えて行かなきゃね。裕太に依存しちゃいけないって」
急に温かいものに包まれたのが、裕太の腕の中だと分かるのに時間はかからなかった。
「裕太・・・・・」
「いつもなんで舞ちゃん、いや、舞はそうやって自分を犠牲にするような言い方。俺嫌いやで。ちゃんと自分の思っている事言ってええんや。」
「でも、私は」
「自分を大切にせんといけんよって毎回言っとるやろ?」
その言葉を言う裕太の声は今までで一番優しい声だった。
「助けて、裕太。」
「うん。」
「ずっと、ずっと怖かった。すごく怖かったの」
泣きながら言う私の唇を裕太は優しく奪った。
目を覚ますと、辺りは暗くなっていた。
あの後、裕太は私が落ち着くまで優しく抱きしめ続けてくれていた。
泣き疲れて眠った私を、裕太はベッドに運んできてくれたらしい。
どこまでも優しいんだから、裕太は。
あのまま、あの先を望んでしまった私は馬鹿者だ。
ゆっくり起き上がり、携帯を見るとみっちりと着信履歴が入っていた。
「匠吾・・・・・。」
夜までには帰ると言っていたっけ。
もうそんなことも忘れていた。
どう言い訳をしようかと考えていた時だった。
「お前ええ加減にせえよ!」
初めて聞いた裕太の怒鳴り声。
ビックリした私は寝室を出てリビングへとゆっくり歩き始めた。
「お前、どれだけ傷付いてる思っとるんや?舞はお前を最後まで悪く言わなかったで!」
裕太の怒鳴り声は続いている。
私は玄関の方へと足を向けた。
「俺は、お前だから舞を任せられると思って身引いたんやで?」
裕太の話に足が止まる。
裕太が私から身を引いた?
裕太も私の事が好きだったの?
そんな事が頭を巡りながら、もう一歩進めようとした時だった。
「そんなん今は関係あらへんやろ。今は舞は俺の嫁や。」
「!」
低く、感情の感じない声。
すぐに匠吾の声だと分かった。
でも、なんで匠吾が裕太の家に来てるの?
2人の関係性はないはず。
「舞はお前の嫁さんだけど、俺は、舞の事を思って・・・・・匠吾に託したんやで。一番信頼してる幼なじみやから。」
「!」
つい声が出そうになった口を抑えた。
裕太と匠吾が、幼なじみ・・・?
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