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裕太に今までの事をとゆっくりと話した。
匠吾との関係は結婚してから少しして愛から変わっていたこと。
私の事を愛しているのか分からなくなり、別れを切り出すと強く腕を引かれて、愛のない行為を繰り返されていること。
そんな事をされながらも、逃げられない自分に嫌気がさしていることも。
裕太はなにも言わず、私の話を真剣に聞いていた。
「私の話はこれが全部。」
話し終わった私はゆっくり裕太の方を見つめる。
俯いて私の方を見ない裕太を見ていれなかった。
何で私、裕太にこんなこと話しているんだろう。
裕太には迷惑かけたくないからって匠吾を選んだはずなのに。
私は零れていた涙を拭き、作り笑いを浮かべた。
「ごめんね。こんな事話されてもどうしようもないよね。自分がもっとしっかりしていたら、匠吾もこんな事しないはずだし。」
「そうやって!・・・・・自分の価値を下げちゃダメやって、言うたやろ。」
強く注意するように言った裕太の顔は、涙で濡れていた。
「裕太・・・・・」
「ごめんな、気付かんで。」
悲しそうに呟く裕太に私は首を左右に振った。
「裕太はなにも悪くないの。何も・・・・。」
その後の一言が、喉の奥から出ない。
‘’私、裕太の事が好きだったの‘’
‘‘お願いだからここから連れ出して’’
そんな言葉の背後に匠吾の顔がちらつく。
そんな事をしたら、裕太にまで迷惑がかかる。
でも、そうならなんで私はこうして裕太の傍に来たの?
自分の世界を変えたいからじゃないの?
「裕太、こんなのダメだって分かってる。おかしいことだって。」
「舞ちゃん・・・・」
裕太の腕を引き寄せ、私はゆっくりキスをした。
「!」
唇を放すと、目を大きく開け驚いている裕太の顔が見え、思わず笑ってしまった。
「お、お前なに人の唇奪っておいて笑っとるねん!」
「だって、目が飛び出そうな位驚いているから。」
「そりゃびっくりするやろ、急にそんなされたら。」
たちまち顔を赤くする裕太が昔と変わらなくて、嬉しくてまた涙が出た。
「・・・・ちゃんとあの時に伝えたら良かった。」
「え?」
「私、裕太の事好きなんだよ。」
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