9

裕太に今までの事をとゆっくりと話した。

匠吾との関係は結婚してから少しして愛から変わっていたこと。

私の事を愛しているのか分からなくなり、別れを切り出すと強く腕を引かれて、愛のない行為を繰り返されていること。

そんな事をされながらも、逃げられない自分に嫌気がさしていることも。

裕太はなにも言わず、私の話を真剣に聞いていた。


「私の話はこれが全部。」

話し終わった私はゆっくり裕太の方を見つめる。

俯いて私の方を見ない裕太を見ていれなかった。

何で私、裕太にこんなこと話しているんだろう。

裕太には迷惑かけたくないからって匠吾を選んだはずなのに。

私は零れていた涙を拭き、作り笑いを浮かべた。

「ごめんね。こんな事話されてもどうしようもないよね。自分がもっとしっかりしていたら、匠吾もこんな事しないはずだし。」

「そうやって!・・・・・自分の価値を下げちゃダメやって、言うたやろ。」

強く注意するように言った裕太の顔は、涙で濡れていた。


「裕太・・・・・」

「ごめんな、気付かんで。」

悲しそうに呟く裕太に私は首を左右に振った。

「裕太はなにも悪くないの。何も・・・・。」


その後の一言が、喉の奥から出ない。


‘’私、裕太の事が好きだったの‘’

‘‘お願いだからここから連れ出して’’


そんな言葉の背後に匠吾の顔がちらつく。

そんな事をしたら、裕太にまで迷惑がかかる。

でも、そうならなんで私はこうして裕太の傍に来たの?


自分の世界を変えたいからじゃないの?

「裕太、こんなのダメだって分かってる。おかしいことだって。」

「舞ちゃん・・・・」


裕太の腕を引き寄せ、私はゆっくりキスをした。


「!」

唇を放すと、目を大きく開け驚いている裕太の顔が見え、思わず笑ってしまった。

「お、お前なに人の唇奪っておいて笑っとるねん!」

「だって、目が飛び出そうな位驚いているから。」

「そりゃびっくりするやろ、急にそんなされたら。」

たちまち顔を赤くする裕太が昔と変わらなくて、嬉しくてまた涙が出た。

「・・・・ちゃんとあの時に伝えたら良かった。」

「え?」


「私、裕太の事好きなんだよ。」


















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