12
「あいつとは、家が隣で。親が仲良くてな。それからなんとなく一緒にいるようになったんや。」
最初は荒々しかった匠吾はいつもとは違う、優しい手付きで私を抱いてくれた。
ひとしきり行為を終えると優しく私に布団をかけ、隣でタバコを付けて話し始めた。
「なにをやるにもあいつと比べられてな。運動でも、勉強でも、進路先にも。俺はあいつに負けたくない気持ちが強くて、むきになってやってた。なのに、あいつは自由は自分が好きなものに夢中で、楽しそうに生きててさ。」
匠吾の呆れたような、少し笑ったようなそんな顔で話しているのは初めてだった。
「初めて聞いたわ。そんな話。」
「まあ、大学も広いからな。会うことも少ないし。わざわざ幼なじみだなんて言わへんよ。でもな・・・・」
視線を私の方に向け、少し困ったような笑みを浮かべて私の頭に手を置いた。
「好きになる人が一緒になってしまうなんてな。」
「!」
「あいつと楽しそうに話す舞が凄くキラキラしてて、俺があいつになれればって何回も思ったんや。でも、あいつは舞より、夢を選んだ。本当に馬鹿な奴や。終いにはお前なら舞の事任せられるとか言ってきて、何様やねんと思ったけどな。」
裕太が言っているのを想像して、思わずクスッとしてしまった。
「・・・舞、まだあいつの事好きなんやろ?」
ボソッと言った言葉にドキッとする。
匠吾がタバコを消し、私を抱き起こして私の肩に顔を埋めた。
「・・・・・ちゃんとした旦那になりたくて、必死になってたら舞の事見れなくなってた事、やっと分かったんや。本当にすまん。愛し方が下手でごめんな。舞を傷付けてごめんな。だから、もう一度チャンスをくれへんか。」
「匠吾・・・・・・」
私は、どうしたいんだろ。
私はどうしたいの。
私は分かっている答えを出せずにいた。
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