7

あの後裕太とは連絡はせず、いつも通りの毎日を過ごしていた。

あの頃の自分はおかしくなっていた。

そう思い込むしかなかった。

そうでもしないと、あの明るい世界にまた戻りたいと思ってしまうから。


「舞!」

「あっ!」

急に匠吾に呼ばれ、拭いていた皿が手から落ち、床に割れてしまった。

「ご、ごめんなさい。今片付けるわ。」

慌てて屈んで皿を片付けようとした時、指に破片が刺さってしまった。

「いっ・・・・」

指に血が滲み、床に落ちていく。


「まったく、お前は本当に鈍いな。」

見上げると、匠吾は私を見下ろしていた。

「どうせ何か違う事考えてたから落としたんやろ。まったく。」

なんで、私ばかりこんな目に合わなきゃいけないの。

「・・・・かいよ。」

「え?」

「もう限界よ。」


私の何かが溢れていた。

もう、限界だった。


「私はあなたの何なの?家政婦でもお母さんでもない。なのに毎日家事して仕事して。私ってあなたの世話をするために生きてるの?あなたと幸せになりたくてこの生活を選んだのに。あなたの機嫌ばかり気にしながら過ごす毎日はもう、限界なの・・・・。」


匠吾はなにも言わず、私の話を聞いていた。

少しすると私の正面に屈んだ。


「これは舞の為に心を鬼にしていってるんやで。だから、早く俺に釣り合う嫁になってくれ。はよ皿片付けや。」

立ち去ろうとした匠吾の後ろ背中に、ボソッと言った。

「・・・・離婚して。」

「・・・・今、何て?」

「もう無理です。離婚して下さい。」

涙が溢れた。

もう私の限界な気持ちが涙として頬を伝い落ちていた。

匠吾はまたこちらに向かってきて、私の腕を取り、無言で私を引っ張っていく。


「匠吾、離してっ・・・・!」

匠吾は寝室のドアを開け、私をベッドに押し倒すと、乱暴にキスを繰り返した。

「嫌、匠吾、いやっ・・・!」

匠吾はなにも言わずに私の服を脱がしていく。


いつもそう。

何かの欲を持たせば、私の機嫌がなおると思っている。

私の機嫌じゃなくて、自分の機嫌が治るだけなのに。


私は涙を溢しながら、匠吾の愛のない行為を受け入れるしかなかった。




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