5


匠吾の機嫌をとりつつ、毎日を過ごす。

私って、なんのために生きているんだろう。


「舞本当に久しぶり!変わってないね!」

「美希も変わってないね。」

「本当、まさかあのサークルの中で売れっ子漫画家が生まれるなんてね!久しぶりにみんなで会うのも楽しみ!」

同級生の美希とも会うのは数年振り。

結婚式以来だろうか。


サークルの集まりに行ってくると伝えたときも、匠吾は私の方を見もせずに「気いつけて行ってきや。」と言うだけだった。

男もいるのかとも心配されないというのは、そこまで私の事には興味ないんだろう。


「えー、今日はみんな来てくれてありがとうな。久しぶりにゆっくり楽しもうや。乾杯!」

「乾杯!」

裕太の家で始まった久しぶりの飲み会は、本当に当時の頃に戻った様に楽しい時間だった。

こんなに笑ったのいつ振りだろう。

私ってこんなに笑えたんだ。


「じゃあね、裕太!」

「活躍応援してるぜー!」

数時間続いた飲み会は、あっという間に過ぎ、それぞれが裕太の家から帰って行った。

「舞ちゃんごめんな。片付け一緒にしてもらって。」

「いいの、家一番近いの私だし。どうせ帰っても誰も居ないし。」

「え、旦那さんは?」

「休日出勤。上司さんと取引先の人と食事会してるの。」

「そっか・・・・」

私が洗い流したお皿を裕太が隣で拭いている。

もし、あの頃自分の気持ちを伝えていたら。

こうして毎日二人並んで家事をしていたのだろうか。


「裕太、彼女居ないの?」

「居らへんよ。俺の魅力に気付く女性に出会えへんのおかしいんやけど。」

「それ、自分で言う?」

「な、自分が既婚者からって!」

そう言って私と裕太はケラケラ笑った。


この時間がずっと続けばいいのに。

そんな事思っちゃいけないのに、そんな事ばかり考えてしまう。


「なんか、久しぶりにこんなに笑った。」

「そうなん?」

「なんか、結婚してからずっと家事と仕事の往復でさ。

私ってなんのためにこの人と結婚したのかなって思うこと多くて。」


匠吾はもう私の事なんとも思っていない。

現に体の関係も、愛の言葉も、最後にもらったのはいつだろう。


「やっぱり女の魅力がないのかな、私って」

「そんな事あらへんよ。」

自傷するように笑いながら言った私の言葉に裕太は即答した。

「舞ちゃんは充分魅力的やで。きっと旦那さんも気恥ずかしくて言えへんだけやって。」

「嘘だよ、だってこんな私の事愛してくれるなんて」

「舞ちゃん!」

俯く私の肩に手を置き、裕太は話した。


「自分を大切にせんと。好きになってくれた旦那さんにも悪いで。」

「裕太・・・・・」


優しく裕太は微笑んでくれる。

私の事を見ずに返事する匠吾とは違う。


「・・・・だったの。」

「え?」

「裕太の事、ずっと好きだったんだよ。」


私の何かが、溢れだし始めた気がした。

















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