第24話

ちょうど昼休みに差しかかったところで結依が登校してきたと聞いたが、でもあたしはその姿を見かけてはいなかった。


4時間目が終わったら、あたしは昼食をとるために教室を出る。


賑やかな食堂や購買ではなく、屋上へと続く階段があたしの食堂代わりだった。



人気のない踊り場にパンとウーロン茶を広げて、リノリウムの階段に腰を下ろして昼食をとる。


真夏でも日の当らない場所は涼しく、ひやりとした床が生身の肌に気持ちいい。


そこで一つ目のパンを食べ、ふたつ目のパッケージへ手を伸ばそうとしたとき。


「やっぱここにいた。」


一人だった踊り場には、あたしと同じようにコンビニの袋をぶら下げた生徒が立っていた。




『あ、沙良。』



「おはよう美羽。」




階段を上がってきた沙良(さら)があたしの隣に座る。


沙良とは一年のときに同じクラスになって、今は隣のクラスに籍を置いている友人の一人だ。


知り合ったのは高校に入ってからだが、クラスが別れた今もこうやって一緒に昼食をとっている。




『おはようってことは今頃登校してきたんだ?』



「そう、暑くてね。」



『どっかの誰かさんみたい。』



「やだ、辻村君のことだったらやめてくれる?」




沙良がペットボトルのレモンティーに口づけながら言う。


表情筋をピクリとも動かさない顔はガラス細工のように精巧で、沙良もある意味周りから一目置かれる存在だった。

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