第23話

ぶっちゃけ結依はのんびりしているようでちゃっかりしてるし、要領だっていい。


いざとなったら持ち前の武器を駆使して何とかするだろうし(女性教師に体で対価を支払おうとしたときはさすがに止めたけど)、成績だってちゃんと勉強すれば褒められたものだ。



それに――…




『あたしが心配しなくてもちゃんと心配してくれる人がいると思うよ?』




すべての教科書をしまい終え、イスに腰を下ろしながら言う。


一瞬、浅岡君はきょとんとして口をつぐむが、でもすぐに「あぁ…」と表情を曇らせた。




「女か。」



『女だよ。』




言い切ったところで、ホームルームを告げるチャイムが鳴り響く。


間もなくして担任の先生がやって来たため、浅岡君も自分の席へ帰っていった。


にぎやかに談笑をしていた生徒たちも慌てたように席へつき、クラス全員が先生の「ホームルーム始めるぞー」って声に耳を傾ける。


あたしも机に頬杖をついて黒板のほうを見るが、でも意識は窓際の一番後ろの席へ向いていた。



規則正しく並んだ机


一ヶ所だけポツンと浮いている空席。


さっきまであたしと浅岡君の思考を占領していた奴の席だ。




「なんだ辻村は今日も休みか…」




出席簿に記されるのは×印。


担任がタメ息を漏らした途端、教室は哀愁の渦に呑まれた。

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