第22話

教室へ入ると、すでに何人かのクラスメイトの姿が見受けられた。


席へ着いた瞬間、至るところから注がれる視線もいつものことだ。


結依といるときだって、この不躾な視線が逸れることはない。


3日前には"近づくな"と呼び出され、その一週間前には、幼なじみ辞めてくれない?というバカげた要求を、女子トイレという古典的な場所で受けたばかりだ。


もちろんまともに取り合うつもりはないが、でも他人に口を出されるのはやっぱちょっとムカつく。



あたしがカバンの中から教科書を取り出していると、一度カバンを置いた浅岡君が再びあたしのところまでやって来た。




「あのバカにメールくらいしてやれ。」




ポケットに手を突っ込んだ浅岡君があたしを見下ろして言う。


身長差があるため、彼に見下ろされると少し高圧的だ。




「幼馴染なんだから一言"来い"って入れてやれよ。本気で留年するぞ。」



『出席日数の計算くらいはしてると思うけど…』



「あいつが?すると思うか?」



『うーん…』



「そこで迷うなよ。」




呆れたように肩を竦める浅岡君。


しばらく思考をめぐらせたあたしはやがて"大丈夫"という結論に達し、『たぶん平気だと思う。』根拠もなく頷いた。


浅岡君は不審げに目を細めてあたしを見るが、でも二度目の迷いはなかった。

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