第21話
浅岡君は不本意らしいが、結依が懐いているんだから仕方がない。
結依は他人の都合を考えて行動するような奴じゃないし、そんなのは17年結依を見てきたあたしが一番よく知っている。
結依が何を思って浅岡君に心を許しているのかは分からないが、でもどこか相通じるものがあるのだろう。
もしかしたら浅岡君の大人びた雰囲気が結依を惹きつけているのかもしれない。
結依の奴、妙に子供っぽいとことかあるし。甘やかされるの大好きだし。
浅岡君の面倒見がいいところはここ数ヶ月見てきて分かったし、高校生にしては大人っぽい顔立ちだって、結依と並んでも引けを取らないくらい整っている。
浅岡君の知名度は、女子生徒を中心とした憧れが嫉みとなってあたしに突き刺さるほどだった。
「そういえば結依は?今日は一緒じゃねぇの?」
ようやく学校へ着いた頃、浅岡君がふと思い出したように言った。
『さぁ、今日は休みじゃない?』
「なんで。」
『暑いから。』
脱いだ靴を下駄箱に押し込めながら言うと、浅岡君は"は?"と顔を顰めた。
まぁ普通の人なら当然疑問に駆られるだろう。
休む理由が暑いから、なんて、まず許されるはずがないのだから。
「2日前もそんな理由で休んでなかったか?いいのかよそれで。」
しかし、さすが浅岡君だ。
結依と一緒にいるだけあって、結依の性格を知り尽くしている浅岡君はすぐに何を言っているのか理解したようだ。
理解した上で、今度は呆れたように眉間に皺を作る。
「ちゃんと連れて来ないとマズイんじゃねぇの?出席日数大丈夫か?あいつ。」
『もう少し涼しくなったら自分から来るでしょ。』
「それは夏が過ぎたらってことか?」
『うん。』
「手遅れだろ、それ。」
『でも暑いの苦手みたいだし。』
「お前も大概甘いのな。」
お前"も"ってところに浅岡君の軽蔑を感じる。
浅岡君は結依の女にダラしないところをよく思ってないからだ。
何だかんだ結依とつるんではいるが、でも基本的に甘ったれた結依に対する扱いは手厳しい。
ふわふわと掴みどころのない結依とは対照的に、浅岡君はストイックなスタンスを裏切ることなく真面目だった。
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