第14話

『その台詞さっきも聞いた気がする。』



「俺にとっては大事なことだもん。」



『女の子大好きだもんね。』



「美羽のことも好きだよ。」



『……、』



「彼女の次にだけどね。」




結依が一体なにを思ってこんなことをするのか、そんなことを考えるのはもうずっと昔に放棄した。


いくら考えたところで答えなんて見つからないし、理由を探すだけ無駄だということにも気づいた。



結依は興味本位で幼なじみとセックスするような奴だし、あたしだって流されるままに身を委ねてしまうような軽いオンナだ。


きっと一番気心が知れた仲で、一番傍にいたのがあたしで、たまたま性別の不一致が重なって、たまたま観た映画がマズかっただけなのだ。


手頃だった行為に深い理由なんてない。




『ほんと最低。』




あたしは美しく微笑む結依の首に腕を回し、少しだけ踵を上げた。


絡めた腕を自分の方へ引き寄せれば、結依もあたしがなにをしたいのか察したのだろう。


笑みを深くした結依は、目線を合わせるように腰を屈めてくれる。




「いつも外でするなって言うのは美羽なのにね。どうしたの?」




スッと目を細めた結依。


唇にかかる吐息を、めずらしく焦れったいと思った。


肌を焦がす熱みたいに、胸の奥をチリチリと燃やす。

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