第12話

夕飯を食べ、夜9時を回った頃。


そろそろ帰ると言い出した結依に付き合い、あたしも玄関先まで見送った。


っていうより、キッチンで後片付けをしていたお母さんに有無言わさず「送っていきなさい。」とせがまれ、仕方なくサンダルを引っかけて外へ出たのだ。


家が隣同士で、しかも男に見送りなんて必要ないって思うも、返ってきた言葉が"危ない"の一言だった。



どちらかといえば見送りが必要なのはあたしで、決して結依の方ではない。


附に落ちない扱いにムッとしながら外へ出ると、前を歩いていた結依が突然振り返って足を止めた。




「相変わらず面白いね、美羽んちのオバサンは。」




夜とはいえ、真夏の気温はなかなか下がらない。


昼間灼熱に焼かれた風は湿気を孕み、ベタベタと肌を撫でる。


しかもさっきまでエアコンの効いたリビングにいたせいか、生温いベールを纏っているような感覚は不快感でしかなかった。

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