第9話

しばらく結依と一緒になって漫画を読んでいると、お母さんから夕飯を知らせるメールが届いた。


同じ家にいるんだからいちいちメールしなくたっていいのに、そう思うも、きっと2階まで上がってくるのが面倒だったのだろう。


ごはんが出来たとき、お風呂が沸いたとき、うちの母はよくメールを利用する。



あたしは届いたばかりのメールを確認しながら、ベッドに寝転んでいる結依をチラリと見やった。




『ごはん出来たって、お母さんから。結依も食べてきなだって。』



「わ、まじで?」




むくりと起き上がった結依は嬉しそうな顔をする。


さっきまで結依の視線を独占していた漫画は雑に放られ、ベッドの片隅で寂しそうにしていた。




「オバサンの飯美味いからなー」



『ちゃんと家に連絡しときなよ?結依のお母さんだってもう用意してるかもしれないし。』



「あーそれなら平気。今日仕事で遅くなるって言ってたし。」



『あぁそう。』




もしかして最初から夕飯目的でうちに来たんじゃないだろうか…


嬉しそうに制服のシワを伸ばす結依を横目に呆れていると(だから制服のまま寝るなって言ってるのに)、「今日何だって?」と肩に腕を回された。


結依のキャラメル色の髪が頬に触れ、男子高生が使うには甘めのオードトワレがふわりと香る。




『ビーフシチューだって。』



「俺の好きなメニューじゃん。」



『最初からご馳走する気満々だったんだよ、結依と一緒で。』



「オバサン、俺の顔大好きだもんね。」



『……、』

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