第5話

「バレたら出入り禁止かな?」



『お父さんに殴られればいいんだよ、一度。』



「美羽だってまんざらでもないくせに。同罪だよ。」




結依は手の甲にキスを落とすと、挑発的な目で笑う。


こいつは自分の武器が何なのかを知っている。そして惜しげもなく利用する。


あたしは結依の中性的で艶やかな顔立ちを見つめながら、これだから顔のいい奴は、と諦める。



結依の顔があたし以上に色っぽいのは今に始まったことじゃない。


日焼けを知らない肌は白く、色素の薄い双眸は儚い印象を携える。


小さい頃は"可愛い"と持てはやされていた容姿も、年齢を重ねるにつれて、性質の悪い"美しい"へと変化していった。


結依自身、あれだけ賛美の渦に飲まれれば、中身が染まるまでそう時間はかからなかった。



ふわふわとお人形のように愛らしかった雰囲気も、今じゃ薔薇の棘を携える、高嶺の花だ。

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