第4話

確かに今さらだと思う。


結依があたしの部屋に上がり込むのはこれが初めてじゃないし、むしろ3日に一度はこの部屋で結依の顔を見ている。


こうやって漫画を読んでいるときもあれば、ゲームをしているときもある。寝ているときだってある。


家が隣同士のせいか、結依との付き合いは17年も前から続いていた。



つまり、生まれたときから傍にいたということ。


俗に言う幼馴染というやつだ。


あたしと結依は。




『全くお母さんもなんで部屋に上げたりするかな…』




いくら幼馴染とはいえ、年頃の娘に危機感を持ったりしないのだろうか。


タメ息を吐いたあたしは仕方なくベッドの端へ腰を下ろす。すると既に沈んでいるマットレスは驚いたようにギシッと軋み、小さな抵抗を見せた。


ベッドの主は自分なのに。




「それも今さらだって。赤ん坊の頃から一緒にいるから、オバサンの中で俺は男としてカウントされてないんだよ。」



『それもどうかと思うけど。』



「確かに信頼しすぎだよね。」




そう言って、結依は意味深な笑みを浮かべる。


そして読んでいた漫画から完全に興味を失くすと、おもむろにあたしの腕を掴んで引っぱった。




「本当は幼馴染じゃできないようなこと、しちゃってるのにね?」




引っぱられた体は結依に抗うことなくベッドへ沈む。


結依は横向きになってあたしと向かい合うと、掴んだ手にそっと唇を落とした。


窓から差し込んでくる夕陽が結依の髪をキラキラと透かし、あまりの眩しさと美しさにちょっとだけドキリとする。

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