第26話
実花は弾かれたように顔を持ち上げる。肩を寄せていたせいで突き合わせた顔は唇が触れそうなほど近く、否が応でも意識してしまうような体勢に実花も目を見張ったまま固まっている。
しばらくそんな実花を眺めていると、パッとそっぽを向いた実花は顔をまっ赤にして唇を噛んだ。赤い顔を隠すように手の甲で口元を押さえ、逸らされた双眸は動揺と羞恥に揺れている。
実花の反応を見て分かる通り、コンピューター室で仕掛けたキスは未遂だった。細い背中を抱いて、邪魔な髪を耳にかけたところまではよかったのだが、しかし、上を向かせようと顎をすくったところで我に返ったらしい実花に思いきり身体を突き飛ばされたのだ。
一瞬、何をされたのか分からないまま瞬きを返せば、目の前には口をパクパクとさせて今にも火を噴きそうなほど赤くなっている実花の姿。キャスター付きのイスに座っていたおかげで後ろへ転ぶことはなかったが、それでも初めてのキスに羞恥を爆発させた実花が再び唇を許すことはなかった。
それどころか近づくことすら許されず、あからあまに俺を避けようとする姿勢が部屋へ連れ込むに至った要因の一つでもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます