第25話
「実花が離れて座ってるからじゃん」
「…っ、別に、どこに座ろうと関係ないでしょ?」
「そんなに離れてちゃ話が出来ない」
「もっと大きな声で喋れば…?」
「実花の声が聞こえないんだよ」
もごもごと紡がれる声は不満ばかりで可愛げがない。
幼馴染からカタチを変えてしまった関係に恥ずかしがる気持ちも分かるが、こちらとしては触りたいのに触れなかったという長年のもどかしさを埋めたくて部屋へ呼んだのだ。
ベッドに押し倒されないだけ譲歩していると思ってもらいたいものだが、これを口にしてしまうと本気で帰ってしまいそうなのであえて言葉にはしない。上目遣いで睨みつけてくる実花も今までと同じ関係ではいられないと自覚しているからこそ、どうしたらいいのか分からないといった様子で距離を取ろうとするのだ。
ま、理由はそれだけじゃないんだろうけど。
「実花。そんなに警戒されたんじゃさすがに傷つく」
怖がらせないようにそっと肩を寄せながら言うと、またも目線だけを持ち上げた実花は訝しげに俺を睨んだ。
「…傷つくとかどの口が言ってんの?」
「どの口って?」
「自分で考えれば…?」
「もしかして昼間のキスのこと言ってる?」
「っ、分かってんじゃない!」
「いや、でもあれ、未遂だし」
「未遂って…!」
「未遂でしょ?」
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