第24話

学校を終え、そそくさと帰ろうとする実花を半ば強引に自分の部屋へ連れ込んだのがついさっき。部屋に入るまではぎゃんぎゃんと喚いていた実花だったが、いつしか足を踏み入れることがなくなった部屋へ数年ぶりに押し込んでやると、驚きに目を見張った実花は分かりやすく顔をまっ赤にし、煩かった唇をキツく結んでしまった。


そして固まっている実花を残し、キッチンで二人分のアイスティーを用意して戻ってみればこの有様だ。


めいっぱい距離を取ろうとする実花は部屋の隅で膝を抱え、警戒心をあらわに縮こまっている。テキトーに声をかけても悪態を返されるだけで、目を合わせるどころかこちらを見ようともしない。


これが恥ずかしさからきていると分かっているからこそ可愛げもあるが、それでもずっとこの調子が続けばいい加減飽きてくる。


二人きりになりたくて部屋に連れて来たというのに、これでは実花に触れるどころかまともに顔を見ることすら出来そうにない。




「こっち向かないなら俺がそっち行くよ?」




毛足の長いラグマットに手をついて声をかける。実花はまた分かりやすく肩を跳ねさせたが、俺が実花の隣に並ぶほうが早かった。


「みーか」


顔を覗き込むようにして声をかければ、


「…なんでこっちに来んの」


抱えた膝からおずおずと覗いた双眸が不満げに睨みつけてくる。

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