第18話
いつだってそうだった。
飛鳥が言うように偽る術を持たないから逃げてきた。
冗談めいた告白にさえ動揺を隠せずにいたあたしは想いを知られることで幼馴染という関係が壊れ、自分たちが自分たちじゃなくなってしまうみたいで怖かったのだ。
幼馴染でいた年月はそれほどまでに長い。
飛鳥はあたしの顔を覗き込むようにして腰を折ると、
「実花」
愉しげな唇で優しい音を紡いだ。
「なんで恥ずかしいと思ったの?」
「…今さら聞くの?」
「聞くよ。実花の口から聞かなきゃ意味がない」
「……、」
「俺も言ったんだからちゃんと聞かせて」
不満げに唇を結ぶも飛鳥は楽しそうだ。
色を帯びた眼差しに子どものような無邪気さが見え、そんな顔を自分がさせているのかと思うと堪らなく独占欲を駆られる。
飛鳥は嫉妬したと言ったが、それはあたしだって一緒だった。断ると分かっていても、優しく好意を受け入れて微笑む飛鳥に怒りを覚えた。酷く身勝手だと思うも、飛鳥の興味が一瞬でもあたしじゃない誰かに向けられるのがすごく嫌だったのだ。
だからあたしは嬉々とした様子の飛鳥を見上げ、繋がれた手におずおずと自分の指を絡めた。
緊張と羞恥で泣きたいのを堪えて唇を噛み締める。
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