第19話

「…浮気したら許さない」


「先に言うことがあるでしょ」


「…、好き」




十数年分の想いは心もとなく唇から零れた。


おそらく耳を澄まさなければ聞こえないほどの声だっただろう。それでも嬉しそうに目を細めた飛鳥は「よく出来ました」と頼りない声を拾い、あたしを抱き寄せることで気持ちに応えてくれた。


それだけで満たされた気持ちになるから不思議だ。


関係を変えても想いのカタチは変わらない。


飛鳥もそうだったらいいな、と、広い背中を求めて腕を伸ばした。




「実花」


「何?」


「もう、俺しか見ないでね」




何気なく見上げた先――…


鈍く光るピアスと、外された眼鏡の奥に本当の欲を見た気がした。




-End-

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る