第17話
「好き…?」
「そうだよ」
「あたしを…?」
「そうだよ」
「あすかが…?」
「そうだよ。ガキの頃からずっとそう言ってる。実花は恥ずかしいんだか何だか知らないけど、全然信じようとしなかったけど」
「な、だって!全然本気っぽくなかったし…!」
「本気で言おうとするとビビッて逃げるじゃん」
「だからってあれじゃ伝わらない…!」
「伝えさせてくれなかったのは実花でしょ?」
「だって真剣な顔されると恥ずかしい…っ!」
煽られるまま叫んだあとでぱち、と瞬いた。
瞬いたのはあたしだけじゃなく飛鳥も一緒だった。
マズい!と失言に気づいたときにはもう遅く、聡い飛鳥がニヤニヤと憎たらしいほどの笑みを口元に浮かべる。
「へぇ?恥ずかしかったんだ?」
とっさに顔を背けるも無駄だった。握られた手を引っぱられ、イスの脚にくっついたキャスターが軽やかに床の上を滑る。イスごと飛鳥の足の間に納まったあたしは一瞬で逃げる隙を奪われ、身動きが取れないまま自身の失言に大人しく唇を噛むしかなかった。
きっとここで強がっても墓穴を掘るだけだ。あたしの気持ちなんて当に筒抜けだろうし、今さら隠しようもないくらい赤く熟れた頬の誤魔化し方をあたしは知らない。
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