第15話
「い、意味分かんない…」
しかし、見つめるだけの沈黙に耐え切れなくなったあたしはフルフルと首を振った。そのままイスの脚がキャスターになっているのをいいことに僅かだが距離を取る。
飛鳥は何も言わなかったが、引き留めもしなかった。
いつもなら冗談みたいな戯れにアタフタするあたしを笑おうとするくせに、今日の飛鳥は狼狽えるあたしを前にしても揶揄うどころか表情一つ変えることすらしない。
冗談にしようとするあたしを静かに見つめ、レンズの奥に潜んだ瞳がジリジリとにじり寄ってくる。
「妬くって、なに…」
思いのほか乾いた声が教室の空気を震わせた。
だって、あり得ない。
あり得ないのだ。
そんな打消しの言葉を吐こうにも、思考とは裏腹に宿ってしまった期待が胸を焦がして苦しくさせる。
小さい頃から目を惹くほどの容姿に群れを成す女性たちに嫉妬することはあっても、飛鳥があたしに同等の感情を抱いてくれているとは思ってもみなかった。
今日みたいに男の子から告白されて『どうせ実花の顔しか見てないんだからやめときなよ』なんて失礼な物言いをされることはあっても、さっきみたいに“妬く”と、独占欲にも似た言葉で縛られることがなかったからだ。
あとに続く言葉が見つからなくて目線を落とせば、今度は飛鳥の唇から漏れたタメ息がピンと張りつめた空気を震わせる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます