第10話

「ちょっと待ってよ!怒ってるって何!?」


「あー、お腹空いたぁ」


「だから待ちなってば…!」




なんだこのマイペースさは…!


怒ってるなら怒ってるで理由くらい言え…!


振り回されている自覚はあったが、意味深な言葉を残されては追わないわけにもいかない。


階段を下り、教室に戻るのかと思えば、辿り着いた場所は使用されていないコンピューター室だった。


空調の効いた部屋には何台ものパソコンが設置されており、授業なんかでは一人一台使えるようになっている。




「なんでコンピューター室…」


「涼しくて快適なんだよ、ここ。冬は暖かいし」


「よく来るの…?」


「たまにな?眠くなったときとか」


「理由おかしいから…」




呆れるあたしをよそに、慣れた足取りの飛鳥は一番後ろの席に座った。そして“来い来い”とあたしを手招く。


ここまでついて来た以上、引き返すのは今さらな気がする。仕方なく扉を閉めたあたしは同じように飛鳥の隣に腰を下ろした。


…静かだな、と、妙な緊張に肩が強張る。


40台ほどのパソコンを所有する部屋はそれなりに広く、昼休みにはしゃぐ生徒たちの声は一切聞こえない。


言われるがまま隣に腰を下ろしたはいいが、目のやり場に困るほどの距離と静けさに息をするのも憚られた。


のうのうと着いて来てしまったのは間違いだったかもしれない。何となく落ち着かずに俯いていると、すぐ傍に飛鳥の気配を感じた。


ギ…ッと、キャスター付きのイスが視界に入る。

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