第8話

「いいも何も、邪魔したのは飛鳥だろ?」


「そりゃあ邪魔するでしょー。自分の彼女が他の男に告られてんのを見て黙ってろって言うの?」


「黙ってねぇな」


「でしょ?」


「っ、だから!彼女じゃない…!」




全力で否定するも、久本君の背中はどこ吹く風だ。


ヒラヒラと手を振りながら、教室へと戻っていく。


昼休みとはいえ、普段使われることのない階段に生徒たちの姿はない。進入禁止と書かれた扉が頑なに生徒たちの進入を阻み、階段を下りた先から聞こえるのは昼休みにはしゃぐ声と微かな足音だけ。


深くタメ息を吐いたあたしは呑気に「行っちゃった」なんて言っている飛鳥の脇腹を肘で小突いた。




「ちょっと、何。痛いな」


「うるさい!最悪人間!」


「人のこと殴っといてそういうこと言う?」


「そこまでしてない…!」




ちょっと脇腹を小突いただけではないか。吐き捨てるように言って階段を下りようとすると、飛鳥からは「何怒ってんの?」と、悪びれた様子もなく声がかかった。


本気で分かっていないのか、あっけらかんとした態度に苛立ったあたしは足を止めて飛鳥を睨む。

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