第6話

「何すんの、じゃない!落ちたらどうすんのよ…!?」


「だから後ろから支えたじゃん。落ちなかっただろ?」


「そういう問題じゃない…!」




あのまま真っ逆さまに落ちていたらどうなっていただろう。今さら恐怖を覚え、声を荒げた。助けようと手を伸ばしてくれた彼は未だポカンとしたまま固まっている。


そんな彼にいち早く気づいたのは飛鳥だ。飛鳥はあたしの肩ごしにひょいと顔を出す。




「えぇと、久本だっけ?悪いね、驚かせて」


「――…え?あ、いや」


「もう大丈夫だから。行っていいよ」


「は?」




飛鳥の言葉に、呆然としていたクラスメイトの思考がようやく動きを見せる。しかし、ぞんざいな物言いにクラスメイトの声があからさまに低くなったのが分かった。


彼に呼ばれたとき、教室には飛鳥の姿があった。わざわざ人気のないところまで連れて来られて何が行われていたのか分からない飛鳥じゃないだろうに、なぜ中断させるような真似をするのだろう。



「っ、ちょっと!飛鳥…っ」



応えられない想いでも感謝はしている。飛鳥の無遠慮な態度に思わず名前を呼べば、飛鳥は「何?」と、無邪気にあたしを見やる。

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