第5話
代わりに吐息混じりのテノールが耳元で甘く囁く。
目の前には手を伸ばそうとしたのか、おかしな格好で固まっているクラスメイトの姿。後ろに人の気配を感じてパチパチと瞬きをしたあたしは、声の持ち主によって抱き込まれていた。
肩を掴まれ、傾いた背中が広い胸に凭れかかっている。
危なかった、と、危機を察するより先に、クラスメイトの唇が「あすか…」と、動くのが見えた。
「あす、か…?」
「ん?何?」
「…っ」
恐る恐る後ろを振り返ってみて驚愕。
なんでこいつがあたしの背後に立っているのか、自身の危険に対する怒りも含めて「何?じゃない…!!」と叫んだあたしは身体を捩ることで声の主から離れた。
「ちょ、危なっ」
思いきり腕を振ったからだろう。
今度は声の主――…飛鳥が後ろによろめく。けれども咄嗟に手すりを掴むことで体勢を整えた飛鳥は「いきなり何すんの」と、あっけらかんとした表情で言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます