第6話
「面識は、ないと思います」
「…じゃあ、こんなところで何してるの?」
「あなたを待っていました」
「面識ないって、言ったばっかだよね…?」
やはり、これはちょっと、関わってはいけないパターンだっただろうか。意地でも知らん顔を通すべきだっただろうか。後悔したときにはもう遅く、混乱する程度には言葉を交わしてしまっていた。
何だか、もう、下手に避けることすら面倒くさくなってくる。
「君、家は?」
「分かりません。気づいたらここに居ました」
「冗談に付き合ってあげられるほど僕も暇じゃないんだけど。もしかして、家出?」
「違います」
「だったらなんで…」
「本当に、気づいたらここに居たんです」
食い気味に言われ、思わず口を噤んだ。瞬きすら返さなかった彼女が、まっすぐに僕を見つめているからだ。
凛とした姿勢で顎を引き、揺らぐことのない双眸が冗談ではないと責めているかのように突き刺さってくる。
僕は肩の力を抜いた。髪をグシャグシャにしたいのを堪え、代わりに息を吐くことで感情を整える。
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