第18話

「部屋、間違ってません?」




わざと嫌みっぽく言えば、男は食べかけのカキ氷を地面に置いて、のそりと腰を持ち上げた。


そして対峙するように向き直ると、耳にかかった髪がゆるりと解けて肩に落ちる。


顔が綺麗なせいか「…っ」迫力のある眼差しについ圧倒されてしまった。すぐさま足の裏に力を込めて耐えるも、男は底の見えない双眸を楽しげに細めてみせる。




「間違えたって、本気で思ってる?」


「何が…」


「俺は、アンタが帰るのをずっと待ってたの」


「は…?」




揺らいだ影に気づいたときにはもう遅く、二人の間にあった距離はあっという間になくなっていた。


正面に立たれてクッと息を詰める。身長はたぶん、180センチくらいあるのではないだろうか。不純なく見下ろされ、勘違いしてしまいそうなセリフに胸がざわりと音を立てる。


しかし――…




「あ、赤くなった」




や、嘘。


前言撤回。




「なってないです…!」


「そう?でもごめんね。そういう意味じゃないんだよ」


「だからぁ…っ」




言い返したい気持ちを抑え、代わりに小さく舌打ちをした。


言葉じゃ勝てる気がしない。


ものすごーくムカつくけど。

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