第16話
塾からアパートまでは電車とバスを乗り継ぎ、1時間ほどかかる。
塾が市街地の中心にあるのに対し、あたしが住むアパートは静かな住宅地の更に奥まったところにひっそりと建っている。
敷地の周りを深緑の垣根がぐるりと囲い、秋には色鮮やかな椿の花が、古びたアパートに不似合いな美しさを添えるのだ。
夕食の買い出しを終えてアパートへついた頃にはもう、時計の針は夕方の5時を回ろうとしていた。
「疲れたぁー…」
夏の暑さは容赦なく体力をも奪う。
夕方になっても全然衰えようとしない暑さにうんざりしつつ、あたしは自分の部屋を目指す。
建物の中に入ると、すぐ二手に分かれる廊下。
右に3部屋。左に3部屋。右から101号室と始まり、左に行くにつれて102号室、103号室と続いていく。
あたしは6部屋あるうちの105号室を借りているのだが、でも左へ曲がった瞬間、踏み出した一歩は無意識にその場へ留まった。
「あ、おかえりー」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます