第2話

7月28日(晴)




「暑っつー…」




3年前から書き続けている日記の冒頭は、ここ最近めっきりマンネリ化しつつある。


あたしは腐れかけた木の窓枠にヒジをつき、金魚の描かれた風鈴を故意に揺らした。


風鈴は軽快な鈴の音を響かせるが、当然涼しくはない。


木造建ての築何十年にもなるアパートにエアコンなんてものはなく、夏は実家から持ってきた扇風機で騙し騙しの涼を取っている。



それも今年で3年目。


田舎から都会の高校へ進学したあたしは高校一年生の頃からずっと一人暮らしを続けているのだか、通勤ラッシュや人が歩く速度には慣れても、この猛暑だけはどうしても慣れることが出来なかった。


車の排気ガスやアスファルトに反射する熱気が、田舎育ちのあたしには果てしなく合わなかったらしい。

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