第18話

「……、」




目の前には≪不要なレシートはお捨て下さい≫のゴミ箱がある。


いらないなら捨ててけ、そう言いそうになったのは、自分の中だけの秘密だ。


あたしはカウンターへ置き去りにされたレシートを掴み、クシャッと握った。


チューインガムの客が立ち去ったあと、そこに新たな客がやって来たからだ。




「いらっしゃいませ」




カウンターの上には、生クリームがたっぷり乗ったプリンと、サラダが置かれる。例の客だ、と、決して目は合わさずに思った。


穂波ちゃんが言うように、彼はボッサボサの前髪で目元を隠し、毎日同じ時間、同じ商品を手に取り、あたしがレジに入ったのを見計らってやって来る。

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