第19話

「358円になります」


「……、」


「ドレッシングは別売りですがよろしいですか?」




小さく頷いた客。あたしは丁寧に置かれた千円札を受け取る。レジを操作しながら、彼がなぜあたしの接客を選ぶのか考えていた。


贔屓にされるほど自分の接客がいいとは思えないし、彼に対しても特別な接客をしたつもりはない。愛想を良くしたつもりもない。


それでも彼は、毎日あたしの前にプリンとサラダを差し出す。




「642円のお返しです」




あたしは数枚の小銭を手の平で数えながら、やや事務的に言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る