第16話

あたしがニッと歯を見せると、彼はまっ赤になって固まった。


そして「え、な、え!?」と、訳の分からない言葉を連ねる。


うん、淡い青春って素晴らしい。


あたしと若宮が惰性で続けているような、即物的で、快楽を追い求めるだけの付き合いとは大違いだ。




「し、知ってたんすか…?」


「穂波ちゃんもあと30分くらいで上がりだし、待ってたら?」


「意地悪っすよ、小春さん…」




ボソッと呟き、彼は不貞腐れたように唇を尖らせた。それが照れ隠しだと分かってしまうからこそ可愛らしい。


180センチくらいある男子高校生に、可愛いと言うのは失礼なのかもしれないが、でも穂波ちゃんとは違った人懐っこさが微笑ましくて、つい揶揄ってしまうのだ。


あたしが「ほら行っといで」と、レジから追い出すように彼の背中を押すと、松木君はまだ納得のいかなそうな顔であたしを睨んだ。

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