第13話

「ほら、行こう。出来れば始発に乗りたい」


「なんかあたしだけ手ぶらっていうのも…」


「大丈夫。朱里は俺の手を掴んでればいいんだよ」




首を傾げた兄が優しく微笑む。


結局、始発電車の時間が迫っているのを理由に、兄はあたしにバッグを持たせなかった。


二階から一階に下りたあたしたちは物音を立てないように靴を履き替え、玄関のドアに鍵をかける。




「静かだね」




住む人を失った家はとても寂しい色をしている。


肩ごしに振り返った家は夜に包まれ、明かりがなきゃ見つけることさえ叶わない。つまり、あたしたちに帰れる家はない。


あたしたちはこれまでの日常を捨て、犯した罪から逃れるように手を取り合った。

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