第5話
「寝たのか?」
「うん、寝たみたい」
兄の質問に頷きながら答える。同じように父の背後に立った兄は「寝てるな」と、父の口元に耳を寄せた。
「薬は?」
「ご飯に混ぜて飲ませたよ。味とか大丈夫かなって思ったけど、案外平気なんだね。酔ってたからかな」
「そっか」
インターネットが普及した今、睡眠薬は病院に行かなくたって手に入れることが出来る。
もちろん効果の程に不安はあったが、もし効かなくても別の方法を考えればいいだけのことだ。
万が一、危険な状態に陥っても、元々の目的が殺害なのだから取りたてて心配する必要はない。
幸い、酒のつまみに混ぜた薬はよく効いた。
酒が入っていたせいか、虚ろだった双眸が完全に落ちるまでそう時間はかからなかった。次第に呂律が回らなくなり、飲むペースがだんだんと落ちてくる。
作れと言われて用意したつまみも殆ど箸がつけられずに残されたまま、いつの間にかテーブルに頬をくっつけ喋らなくなっていた。
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