第8話

『…、』




思わず固まってしまった。


固まって、ふわぁ。とあくびをするあま兄を見返す。



温めてって、一体どういう意味なんだろうか。




大胆なことを、サラリと言われたことには変わりないと思うんだけど…





「…あぁ、どうぞ?」




不意に目が合った。


あま兄は気づいたようにベッドの端に身体を寄せて、半分くらい布団をめくる。





「受入準備は万全。」



何が。と、言ってやりたい。





「里菜子チャーン、早くして。」



『…やめてよ、その変な呼び方。』



「じゃあ、リナもやめろ。俺を変な呼び方で呼ぶな。」



『変って?』



「あま兄。」




そう言われ、ハチミツ色の隙間から見えた目に、思いっきり睨まれた。


出会った頃は、たぶんちゃんと、"お兄ちゃん"って呼んでたような気がする。



いつからだっけ?




雨音を、"あま兄"と呼ぶようになったのは。

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