第7話
「…な、里菜子…?つか、今何時?」
『19時23分。』
「…あー、やべ。遅刻だ。」
『デート?』
「違う、バイト。」
『…、』
…バイト
あま兄が口にした言葉を、頭の中でゆっくりと復唱させた。
コンビニとか、ファミレスとか。あま兄の言っているバイトがそんな類のものじゃないってことくらい、当の昔から知っている。
あま兄のバイト。あたしは、嫌いだ。
「…リナ?」
うつむいていると、ダルそうに上半身を起こしたあま兄に、やっぱりダルそうに名前を呼ばれた。
低血圧だから、まだ頭の働きが完全ではないのだろう。
相変わらず、指は冷たいままだし。
『なに?』
出来るだけ、普通の声で返す。
「寒い。」
『は?』
「さーむーいー。」
『主語を言え、主語を。』
昔からそうだ。
あま兄との会話はどうも上手く噛み合わない。
言語理解力に苦しむ。まさにそんな感じ。
「リナ。」
『なによ。』
「少し、温めて、俺を。」
あま兄が、ポツリポツリと言葉を紡いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます