第6話

『…兄妹なのに、なんでこうも違うのかねぇ』




まぁ…


血の繋がりなんて、ないんだけど。





12歳のときだっけ?


母親が知らない男の人と、当時13歳だったあま兄をこのアパートに連れてきたのは。





[里菜子。あたしね?この人と結婚するの。]



[里菜子の父親と、お兄さんになる人よ?雨音君、って言うんですって。]



[仲良くしてね。里菜子。]




…雨音君、って言うんですって。



夜の仕事を終えたあとなのか、それともこの父親になる男のためなのか。


母親は派手な化粧とキツすぎる香水をまといながら、興味なさげにそう告げた。





その知らない男――…、


二人目の父親になるであろう人にも、ろくな会話もないままに"父親"を名乗られ。



しかも、両親だった人たちは、まだ小学生と中学生だったあたしたちを残し、結婚と同時に姿を消してしまったのだ。




小学生と中学生の子供を捨ててまで、母は新婚生活を味わいたかったんだろうか?





…まぁ


それも今となってはどうでもいいことだけど。





『こーら。いい加減、起きなってばっ』




今はこの超低血圧人間を起こすことのほうが大事だ。


布団の盛り上がりを大きく揺らし、大きな声であま兄の名前を呼んだ。



途端、「…ん。」と呻り、鬱陶しそうに寝返りをうつ。

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