第5話

頭まですっぽりと被った布団の隙間からは、蜂蜜色の髪がシーツの皺に沿うようにして伸びている。


薄闇の中でも分かる、シルクのような艶を秘めた髪。


その子猫のような毛並みに、思わず指を通した。



タメ息が出る。


染めてるくせに。


ってか男のくせに。


この艶と毛並みは反則だっての。


目の前でスヤスヤと寝息を立てるあま兄を睨み、せめてもの抵抗にと、軽く頭を弾いてやった。




ピクン…ッ


途端、あま兄の指先がかすかに動いた気がする。



起こしただろうか?


ってか、これで起きてくれたら苦労しないんだけど。




『…起きるわけない、か。』




普段は大声で叫んでも、目覚まし時計を10個並べても、ピクリとも動かないようなやつだもの。


案の定、それ以上の反応は得られず、気持ちよさそうに眠るあま兄を見てもう一度タメ息を吐く。




『あま兄ぃー、朝だよー?』




いや、本当は夜だけど。


でもあま兄は夜型だから、あま兄の1日はここから始まるといってもおかしくはないから。


だから、朝。



ふとベッドに潜り込んだままのあま兄を見ると、布団の隙間からわずかに寝顔を窺うことが出来た。


ほとんど布団と蜂蜜色の髪に隠れてはいるが、でも髪の隙間から見えるのは長い睫(まつげ)と、男性にしては綺麗すぎる肌。


それと、造形美を極めたような目鼻立ち。

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