第4話

ガサ…ッ


袋の擦れる音とは別に、雑誌がずり落ちたような、そんな音が聞こえた。



あま兄、起きたのかな?




あたしは手を止めて、あま兄の部屋へ向かった。


リビングを挟むようにして設計された、2つの部屋。


右があたし、左はあま兄。


あたしは迷うことなく、左側のドアを静かに押した。




『…あま兄?』




黒いカーテン。


黒いチェスト。


黒いパイプベッドに、黒いシーツとかけ布団。


おまけに黒い枕カバー。



相変わらず闇みたいな部屋だと思う。


こんなんじゃ例え朝がきても、すぐに夢の世界から浮上するのは難しいだろう。


あま兄の寝起きが悪いのも、きっとこのまっ黒な家具たちのせいなんじゃないかと、本気で思う。


あたしは浅くタメ息を吐き、あま兄の寝ているベッドへ近寄った。




『あま兄?そろそろ19時だよ?』



さらに距離を詰めたとき、つま先に何かが当たった。



…雑誌?


あぁ、寝る前にでも読んでたのかな?


さっき聞こえた音も、きっとベッドから読みかけの雑誌が滑り落ちでもしたのだろう。

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