第3話

外に出たあたしは、まずはスーパーへ向かった。


夕食を作り、次に兄貴を起こさなくちゃならない。


頭の中で指を折り、やらなくちゃいけないことをひとつひとつ整理しながら、簡単な食材をカゴの中に放り込んでいく。




[兄貴、起こさないといけないもの。]



[兄貴?]




そう。


別にベッドに入ることを拒んでついた嘘ではない。




兄貴――…


あま兄は夜型だから、おまけに"超"がつくほどの低血圧人間だから。


だからあたしが起こさない限り、何時間も、何十時間も寝続けてしまうような人間なのだ。



目覚まし時計。


それが、あたしの役目。




『あま兄ぃー?』




たぶん起きているとは思わなかったため、なるべく物音を立てないように玄関のドアを開けた。


小さな声でも部屋中に響いてしまいそうなほどの、狭いアパート。


その古びたアパートに、あたしたちは小学6年生の頃から二人だけで住んでいる。



いや、あま兄は学年が一つ上だったけど。


とにかく、二人暮らしを初めてもう5年になるのだ。




『寝てる、か。』




薄暗くなったリビングに明かりを灯し、先に夕食の支度をしちゃおうと、買ってきた食材を広げた。

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