第21話

[なんだか手のかかる子供がもう一人できた気分ね。]




そう笑った母親に、リナは本気で泣きそうになっていたから。


あいつはずっとひとりぼっちだったあげく、本当の母親に呆気なく捨てられた。



だからこそ、"家族"という繋がりを執拗に欲しがっていたのかもしれない。





覚えてるのは胸に走った痛み。


あのとき、二人の会話をドアごしに聞いてた俺は、情けないことに閉まったままのドアをなかなか開けれないでいた。



病室の外で立ち尽くし、しんみりとした空気が落ち着くのを見計らってからドアノブに手をかける。




ずるくても、母親がリナを悲しませないためについた嘘を、俺はどうしても笑って見過ごすことが出来なかったから。




その嘘を信じ、安心しきったリナの顔がいつか悲しみに変わるのを、俺はちゃんと知っていたから。




ただ、言ってすぐに、失敗したな。そう思った。





「…悲し、む…?」




ベッドスタンドの明かりが不審げに寄った眉を微かに照らす。


後悔したときにはもう遅く、双葉サンは寝かせた身体をゆっくりと起こすと、近くにあったシーツでその身を隠すようにして覆った。



シーツの端をギュッと握り、胸元に置いた手はわずかに震えている。





「…さっきも言ってたけど、あのリナって子、再婚相手の連れ子なんじゃないの…?」




恐る恐る見返してくる双葉サンに、俺は本気で舌打ちしたくなった。

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