第20話

彼女の飛びそうになる意識を舌と唇を使って何度も引き戻す。


無駄にデカい、このクイーンサイズのベッドと引き換えに。



俺の下で身をよじる双葉サンを満足させるためだけに。





『…気持ちいい?』




そっと髪を梳き、あらわになった額に唇を寄せる。


そこに先程までの強気な表情はなく、凛とした雰囲気はただの女へと成り下がっていた。



彼女はオレンジ色に揺れる瞳をまぶたの裏側に隠すと、「姉さんに知れたら殴られるわね…」そう小さく呟いた。




唇がまた甘い吐息を漏らす。





『別に、殴られてもいいんじゃない?』



「…あら、どうして?」



『そしたら生き返る。』




もう絶対にまぶたを開けようとしない母親が。


天真爛漫で、無茶苦茶で、でも夜になれば必ず温めにきてくれてた母親が。



そんな俺の発言を不思議に思ったのか、彼女は閉じていた目を驚いたように見開くと、「ずいぶんと意外なこというのね。」そう言って、小さく笑った。





「もしかして、お母さん子?」



『や、別にそんなんじゃないけど…』



「けど…?」




首を傾げ、不思議そうに俺を見上げる。





『…ただ、リナが悲しまなくてすむかな。って…』

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