第16話

『…似てない、ですね。』




頭ん中でふたりを並べてみたとき、真っ先に出てきた感想がそれだった。


ひとつひとつのパーツは似てなくもないけど、でもまとってる雰囲気は根本的に違う。



天真爛漫な母とは違い、双葉サンは絶対クラス委員長とかやっちゃうタイプだろう。




俺が正直に感想を述べれば、双葉さんの凛とした表情が怪訝そうなものへとすり替わる。





『…別に、悪い意味じゃないですけど。』




とりあえずフォローは入れてみたものの、その表情が緩むことはもうなかった。


眉間にシワを寄せたまま、双葉さんはスッと立ち上がる。



ふと視界から消えた姿を追うようにして顔を上げれば、明らかに不服そうな瞳が俺を見下ろしていた。




かすかに遠ざかる香水の匂い。


真っ黒な布地に描かれた白百合が凛とした表情をさらに際立ている。





「朝食、広間に用意していますから。」



『あれ、怒りました?』




こんな時、わざと挑発めいたことを言ってしまうのは俺の癖。


部屋を出てこうとした双葉サンはその足をピタリと止めて、あからさまに眉を寄せた顔がこちらを向いた。





「…むかつくこと言うね。」



『よく言われます。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る