第15話
耳がピクリと反応する。
女の言った言葉を繰り返し、そのワードの意味をゆっくりと噛み砕く。
顔を上げ、首を傾げれば、ふいに女の足袋が畳を擦った。
布の擦れる音に混じり、「聞いてない?」女が俺との距離を詰めてくる。
『…えぇと、名前、』
「双葉です。雨音君の叔母、と言えば伝わるかしら?」
『は…?』
俺の言葉をさえぎり、目の前まできた女、もとい双葉サンが少しだけ悪戯に笑ってみせた。
『叔母って…』
「言葉の通りよ。あなたの母親、初音はあたしの姉なの。」
『な…、』
無意識に顔を出した素。
素っ頓狂な声を出した俺は、さぞかし間の抜けた表情をしていただろう。
腰を折り、双葉サンは呆れたように俺を見つめた。
座ったままの俺と目線の高さを合わせたとき、深緑の匂いに混ざり、香水の甘ったるい匂いが鼻を掠める。
深緑溢れる部屋に、人工的に作られた匂いは合わないな。そう思った。
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